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sideburnzzのブログ

転職支援会社勤務。細く長く浅く広く生きています。特技は壁にぶつかるともっときついことに挑戦しようと、トレイルランニングやウルトラマラソンの大会にエントリーすること。

烏賊祭り

下町で男たちが汗をほとばしらせながら神輿を担ぐ夏祭りでも、川沿いで焼かれた秋刀魚が周辺の人口とビールの消費量を驚異的に跳ねさせる祭りでもない、烏賊祭りについての話をしたい。それは、烏賊を釣りに出かけたはずが、自分の釣り糸と隣の人の釣り糸とが意図せず絡まってしまう「まつり」と言われる現象に一日中悩まされ続け、「ぼうず」という「その日、一匹も釣れない」という結果に終わってしまったという貴重な体験である。

 

教えてもらった通りに釣り針に餌とオモリをつけ、「OK」の合図に合わせて釣り糸を船から垂らしてそれっぽい素振りをしておけば、初心者であってもアジが食いついてくれるという前回の船釣りデビューにアジをしめた僕は、「今回もまあなんとかなるだろう」と完全に慢心、油断しきっていた。よくよく振り返ると、前回は直前に出場したトレイルランニングの大会で砂利道でトップスピードでヘッドスライディングした右掌の生傷のせいで、僕はほぼ釣竿を持っている、いやむしろ釣竿につかまっているに過ぎなかったのだ。油断している場合ではない。

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烏賊というのはどうやらやたらと深い場所にいるらしく、船は神奈川の港から出発し、かなり遠くまで移動し、釣り糸も100mくらい延々と下まで伸ばすことになった。仕掛けを落とす時はオモリがあるから滑らかだが、引き上げる時は手で巻き上げるには時間がかかりすぎるので、電動で一気にやる。エサがなかったり、仕掛けの配置の仕方が変わっていたりと前回とだいぶ勝手が違っていて焦る。20人くらい船に乗っている人たちの中で自分が一番初心者であることは、まず履いている靴下がすでに船への浸水でびしょ濡れになっていることで明らかだ。(靴下を脱ぎ忘れるほど動揺していた)

 

船釣りの場合、船頭の人が初心者の人に釣り方を教えてくれたり、釣り糸が絡まったり故障した時などにお世話をしてくれる。全身真っ黒に焼けたその船頭の若者の話によると、いかに他の人より早くオモリのついた仕掛けを投げ入れられるかで明暗が分かれるらしい。「早く投げ入れればいいのか、なんだ、簡単じゃないか。」

 

「口で言うのは簡単」というのはよくある話だ。実際には限られた時間の中でオモリをと仕掛けを設置し、ベストタイミングで丁度良い場所にオモリを投げ入れ、一気に糸を海底まで垂らすのは至難の技だった。一連のプロセスで何度か右手と左手の役割が変わるのだが、間違えるとオモリがあらぬ方向に飛んで行ったり、釣り糸が絶望的に絡まってしまう。糸を上げるときも両手を巧みに駆使しないとやたらと時間がかかり、他の方を待たせて迷惑をかけてしまうことになる。目を白黒させながらモタモタしていると「さっき教えたよね!?それじゃ釣れないよ!」と間髪入れずに船頭からの檄が飛んでくる。「や、やばい…」

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そう、僕はかなり不器用な方なのだ。人から見られていると緊張もあってなおさらダメだ。水泳もフォームがグチャグチャで全然速くならなかったし、少年野球もなぜか変化球の回転がかかってクセが直らず、失格退場になったこともある。バスケは片手シュートがなかなかできず中学時代は周りから馬鹿にされて悔しい思いをした。知人の茶道のお茶会に招かれたことがあるが、皆の前で焦って茶器をひっくり返しそうになった(足も痺れてしばらく立ち上がれなかった)。新卒の銀行での研修では札勘定(お札を数える)テストで手が滑って札をぶちまけ、日常的に落第していた。サーフィンは2秒以上板の上に立つことができずに1回でくじけてしまった。

 

「なんとか釣ってもらいたい」という船頭の熱っぽさとは裏腹に、僕の腕はいっこうに上達する気配を見せなかった。左右の人ばかりか、なぜか何人かまたいだ人とも釣り糸が絡まった(まつった)。これは仕掛けを投げるタイミングが遅すぎたり、投げる方向が偏っていたり、海の底まで垂らした糸がたわんでいたりと色々な要因が絡んでいるらしいのだが、とにかく僕のはひたすら絡まりまくった。その命中率の高さは狙ってでもなかなか出せないレベルだったと思う。

 

後半の僕は、イカを釣ることでもイカが食いつく感触を感じることでもなく、もはやイカに糸を絡ませずに船頭さんに絡まれずにその場を乗り切れるかということで頭がイッパイだった。方向性は見失っていたが、仕掛けを放つタイミングと方向だけはかなり修練されていた。きっと何かの時に「ああ、あの時、烏賊釣りの仕掛けの投げ方を学んでおいて良かった」と涙を流す時がやってくるに違いない。

 

季節や海流など色々な巡り合わせにも恵まれていなかったようで、船全体でも烏賊をたくさん釣っている人はごくわずかだった。みんなスルメのように顔が日に焼けていた。仲間4人で行って、釣れたのは1杯だった。たくさん釣れた常連さんと思しき方にスルメ烏賊を1杯恵んでいただいた。全てが報われたような気がした。「今日は散々でしたが、完全に準備と実力不足。学ばされることが沢山ありました。次はきっとリベンジします!」とかいうどこかのマラソン大会の振り返りと見間違えそうなくらい似通った反省の弁を残して、帰宅した。

 

イカを天婦羅にしたら最高だった。次は釣れるといいな!